汚くなった本と聴かなくなったアルバム

ファンサイトというものは本来、個人的な思いを綴ることが多いかもしれません。今までもそうして来たと思う。だからこんな断り書きは必要ないかもしれないけど、安倍なつみさんについてとても個人的なことを書きます。


安倍なつみさんがモーニング娘。を卒業する時、「行かなきゃ」という思いに駆られてチケットを取ったことをよく覚えています。遠くから舞台を去る安倍さんを見て「ここからが安倍さんの新しいスタートなんだなぁ」と、そのまんまの感想しか抱けなかったことをよく覚えています。
モーニング娘。の顔として、やることはすべてやり切っての卒業。これからの飛躍を楽しみにしながら「応援しよう」と思った2年ほど前の冬。


そして時が流れ1年前の今頃、僕は本屋で働いていました。
ある朝、朝礼で同僚が連絡事項を伝えていました。
安倍なつみの盗作の件で・・・」
盗作騒動はもう知っていたものの、頭の中でその事件と自分の働いている場所があまり結びつかなかったので驚きました。その時初めて「ああ、本屋だもんな、そりゃそうか」と思いました。


「全て回収で、今後販売中止ということで・・」
その言葉を聴くのは辛かった。動揺しないようにいつの間にか歯を食いしばっていました。でも本当に辛い思いはここからでした。
回収は僕がすることになってしまいました。担当は雑誌だったので関係ないと思っていたのに、何だかんだで「やっといてよ」という流れになってしまった。普段ならほとんど有り得ない流れに運命の残酷さを感じましたよ(笑)


棚の前に行き、1冊だけあるエッセイ『陽光』を抜き取って返本の棚へ。
僕はまだ持っていなかったので、ここで引き取ろうかと真剣に悩みました。でも出来なかった。問題が起きて回収されるものを引き取るということに違和感を感じ、結局返してしまいました。


僕はこの手でエッセイを回収しました。ソロアルバム『一人ぼっち』は、松浦亜弥『×3』後藤真希『②ペイント イット ゴールド』と同じくらいよく聴いていました。これからのソロ歌手・安倍なつみの成長を楽しみにしてました。そんな僕がエッセイを回収しました。「身を切られるような」というのはこういうことか、と体感しました。


それから安倍なつみさんソロ名義の曲を聴くことはありませんでした。アルバムも1回も聴
いていません。トラウマを抱えたまま、今に至ります。


最近やっと、ユニットを通して気持ちが回復してきました。時間が癒してくれた部分もあります。事件に関しては思考が止まったまま。永遠に結論にたどり着くことはない。でも、1つだけ言えるのは「もうあの時のような思いは2度としたくない」ということです。安倍なつみさん本人もハローのメンバーも周りの人もファンも僕も。そしてその思いがあれば、もういいです。「もう2度としたくない、2度としない」それでいい。


今年に入って、たまたま近くの書店で1冊だけある『陽光』を見つけました。回収されるはずが、チェックから漏れたのだと思います。


手に取ってみてみると、これがけっこう汚い。随分前からそこにあるようで、カバーは少しよれよれで黒い指の跡がついている。普段の僕だったら眉をひそめて絶対に買わない状態の本でした。でも僕にはそれがメッセージに感じた。本の悲鳴のように思った。なぜか僕は「この汚くなった本の所有者は僕だと決まっていたんだ」と勝手に思い込み、それをレジへ持って行って買いました。


2年ほど前はたからものだったアルバム『一人ぼっち 』。あの時のアルバムを宝石とするなら、今はただの石ころに変わってしまっていました。ただし、それはまた宝石に戻れる可能性がある原石です。それを磨くのは今の安倍なつみさんと、今の僕。時間がかかってもいいからゆっくりゆっくり磨き上げて、またいつか、大切に出来たらいい、汚くなった本と一緒に。今はそう思っています。


なぜ、千『たからもの』を聴いてこういうことを書こうと思ったかわかりません。でも今のような気がした。やはりきっかけは歌でした。


この話は完全に個人的な体験、個人的な思い出でしかありませんが、読んでくださった方に感謝します。やっと一歩が進めるかもしれないや。