AFTER THE SHOW

彼女が去り、彼女の姿が無くなった舞台で、バンドがもう1度『ボーイフレンド』のアウトロを奏でる。
ショーの終わり。

終わった後、僕は半ば放心状態だったようでした。
ポカンと口を開けてボーっとしていたようで、同席の方に「もう放心状態じゃないですか」と言われ我に返る始末。


まさに夢のような時間としか言いようの無い、楽しく、そして儚い時間でした。


気を取り直して開演前から配られていたアンケートを書き始めました。
アンケートを書くのにはとても時間がかかりました。お芝居とか観に行った時のアンケートもいつも時間がかかるんですよね。いきなり感想を求められても、パッと言葉に出来ないんです。

このサイトの更新もそうなんですが、自分の気持ちや考えを文章化するのって難しい。伝える・伝わる文章を書くのにいつも四苦八苦。いい言葉が生まれてくるまで書けないこともしばしば。


性格的にサクッと書くのが苦手なタイプなんですね(笑)
だから非常にカロリーを消費しながらアンケートを書きました。うーんうーん言いながら。


アンケートに書いた内容について少しだけ。
藤本美貴のディナーショーで歌って欲しい曲は?(カヴァーなど)」みたいなクエスチョンがありました。『大切』『銀色の永遠』。純粋に聴きたい曲を挙げてみました。いつか聴ける日を楽しみに。


カヴァーについては、僕の乏しい音楽知識を総動員し、それに僕なりに分析した藤本さんの声の印象と音域を照らし合わせた結果、Dreams Come Trueさんの『未来予想図Ⅱ』と書く。うーん、聴いてみたい!!


こうしてやたら時間がかかってしまったので、書き終わって立ち上がりトイレに行ってから列に並ぶと、僕は最後の客でした。
「最後に入って最後に出るのもいいかもな」そう思いました。
あとはこの日最後に会うファンは僕なので、もしかしたら印象に残るかもしれないとこざかしい思いが頭をよぎったのも事実です。なにせジーンズだし(笑)


中の様子を窺うと、1人入ってから次の人が入るまでの時間は短いことに気づきました。しかも会話は二言くらいしゃべれるかな?という感じ。思っていたより短い。


僕のひとつ前、先に入っていった女性のファンの方が出ていく様子がする。さぁ次は最
後、僕の出番!しかしカーテンは開かない。中で何かやっているようです。なんだかわからにけどつっかえているよう。女性ファンだから粘れてるんですかね?
ただ、僕にとってそのごく僅かの待ちがいけなかった。緊張感が一気に膨らむ。ぐあーどうしよう!


伝えるべきこと・伝えたいことを伝える。それしかない。今まで応援してきた思いをこの機会に伝えるか?いや、そんなものをたった一言に凝縮するなぞ無理な話。
このショーを見て、藤本美貴の歌を感じて、浮かんだ気持ちを率直に伝えよう。
まずは楽しい時間を過ごした感謝の気持ちを…思考の最中にカーテンが開き、とうとう今日最後の客である僕が中に入る。


一歩中に入るとスタッフだらけ。それがものすごい威圧感に感じ、視界が狭まりました。すぐに黒い枠線の中に立つように促されます。そこへ移動する短い間に、やっとスタッフの後ろに隠されている藤本さんを発見しました。しかし、彼女と目は合わせられませんでした。スタッフが目を光らせている感じがして臆した。


枠内に立つとやっと藤本さんが横に来て「よろしくお願いします」と挨拶。僕も「お願いしまーす」と返した気がしますが、よく覚えてません・・・。


横に立った彼女は小さかった。小さい小さいと聞いてはいましたが、あんなに小さいとは。普通の女の子の標準より少し下かもしれません。僕もかなり身長は低い方なんですが、思わず撮影の時に膝を曲げてしまいました(笑)


撮影ではポーズは取りませんでした。そういうの苦手で。彼女への要求も結局しなかった、というか出来なかった。腕組みして立ってもらってもよかったんですけどね(笑)僕はただただ棒立ち、その横で彼女はダブルピースしてました。


彼女が横にいる時、横を見たかったんですが見れませんでした。1つはやはりスタッフの威圧感。始終警戒されている気がして、余計な行動をする気が起きなかったですね。
あとは、好きな女の子をまともに見れない小学生のような気持ちが邪魔した(笑)恥ずかしくてなかなか彼女の姿を見れません。


撮影が終わって、すっかり萎縮してしまった僕は次どうしたらいいかわからなくなる。藤本さんのほうを向くわけでもなく撮影されたままの格好で立っていました。
その時、藤本さんが「ありがとうございました!」と言って自ら手を差し出してくれる。それにハッ!としつつ、ちょっと感動しながら僕も手を差し出しました。「あっ、ありがとうございました」って返した気がするけど、これまた覚えてません・・・。


普通は両手でニギニギするのかもしれませんが、僕は片手でのみ。紳士ですから。藤本さんは両手で握手してくれたような記憶があります。
彼女の手は小さくてすべすべしてた(笑)女の子の手でした。


真正面で見る、藤本美貴さん。
顔も身体も小さくて、普通の21歳の女の子。どこからあんな声が出るんだろう!メイクが舞台メイクでチョッピリ濃かったけれど、マジマジと見てしまいました。


言わなきゃ!言いたいことを伝えるのを忘れそうになってました。その時にはもうスタッフの方が割って入っていたような気がしましたが、それもよく思い出せません。時間にしたら数秒(たぶん3〜5秒くらい)しか経ってないと思うんですが、なんだかもう「スタッフを挟んで手をつないでいる藤本さんと僕」という奇妙な画が出来ていました(笑)


伝えたかった気持ち。思いのほか、声が出ない、声が小さい。
それでも。やっと、僕が搾り出した言葉。
「歌声、すっごい好きです」


握手しても喋らない人だと思っていたのか、彼女は「あ。ありがとうございます!」とちょっと意外な風でした(笑)


僕はこれを伝えたかったんです。「藤本美貴」の「歌声」。唯一無二のその歌声が、大好きだということをね。他にもっと気のきいた言葉があった気がしますが、これでいい。これが精一杯。彼女の歌を聴いて、感じたすべて。


写真を受け取って、爽快な気分で店を出る。
唯一の後悔は、店の扉を出るまで1回も彼女の方を振り返らなかったこと。
これは大失敗!!!!!!!!その時の自分に小一時間説教したい(笑)



外に出ると、激しい雨が降っていました。
雨のにおい。
気持ちだけはとても晴れやかに、傘を買って帰りました。


当然、彼女が歌っていた『雨』を思い出しながら。